法学部ってどんなところ?「行政法の勉強ってコツが大事?」
行政法の勉強ってコツが大事?
皆さん、こんにちは。今回の「法学部ってどんなところ」では、行政法がご専門である法学部長の周先生にお話を伺いたいと思います。行政法は、行政に関する法律であり、公務員志望の学生であれば必ず勉強して欲しい科目の一つです。では、具体的に行政法とはどのような法律なのか、また、どのように学習していくことが必要なのか、この点について周先生にお聞きしてみたいと思います。
?<教員紹介>
周作彩:法学部長?自治行政学科教授
一橋大学大学院法学研究科博士課程、一橋大学法学部講師、
山形大学人文学部助教授を経て本学へ着任
―――こんにちは。きょうは、先生のご専門である行政法について伺おうと思って参りました。
周:わざわざ来てくれてありがとうございます。行政法の何について聞きたいのかを教えていただけますか。
―――えーと、実は行政法ってどんな法律だろうと思って六法を調べてみたのですが、どこを調べても「行政法」という法律が見つからなかったので、どうしてなのかをお聞きしたいと思っているのですが…
周:六法を調べてくるなんて感心ですね。
―――いや、お恥ずかしい……。
周:恥ずかしいことなんてないですよ。もともと「行政法」という名前の法律は存在しないのですから。
―――そうなんですか。ぼくはてっきり民法や刑法などのように「行政法」という法律があるものと思っていました。
周:民法や刑法と違って、行政法には統一された法典が存在しないんです。じゃあ行政法とは何かというと、これは行政に関する個別の法律の集合体を指すものだと考えてください。ちなみに、行政というのはとりあえず内閣や各省庁、県庁、市役所などの仕事をイメージしてもらえれば結構です。
―――例えば、どんな法律がありますか。
周:一人の人が生まれる前から死んだ後まで、数え切れないほどのさまざまな行政法がその人の人生と関わっています。例えば、あなたがお母さんのお腹の中にいる時からいろいろなサービスを受け(母子保健法)、生まれたあとお母さんが仕事をしていれば保育園に通い(児童福祉法)、6歳になれば学校に入り(学校教育法)、大学を卒業したら就職し(労働基準法など)、年を取れば年金をもらって暮らし(国民年金法など)、亡くなったらお墓に入る(墓地埋葬法)といったように、人生のそれぞれの段階に応じてさまざまな行政法が関わっているのです。
―――先生、ちょ、ちょっと待ってください。たくさんの法律が出てきて混乱してきました。
周:まあ、そう慌てずに落ち着いて聞いてください。たしかに今あげたような法律はすべて行政に関わる法律であり、行政法といえますが、大学で行政法を勉強する場合は、それらの法律をすべて覚えなさいというわけではないので、心配しなくても大丈夫です。そもそもすべて覚えている人なんていませんからね。
―――じゃ、大学の「行政法」の授業では何をどのように勉強するのですか。
周:大学では、個々の法律や判例を素材として扱いながら、それらの法律に共通する法的な仕組み、それらの仕組みを支える基本理論を勉強することになります。料理に例えていうなら、さまざまなレシピを覚えるのではなく、料理の基本的な作法?コツのようなものを習うということになります。料理のコツ(行政法の基本理論)さえ分かってしまえば、あとはどんな素材(個々の法律)を与えられてもレシピを見ながら料理(法律の理解)ができるでしょう。
―――なるほど、行政法の勉強にとってコツ(基本理論)が大事なんですね。
周:あと、行政法は大きく3つの分野からなっていることもついでに説明しておきましょう。3つの分野とは、行政組織法、行政作用法、行政救済法です。このうち行政組織法というのは、役所で働く大勢の人々が互いに喧嘩することがないように、仕事の受け持ちや役割の分担を細かく定めている法律になりますね。
―――行政組織法はなんとなく分かりました。でも、行政作用とか行政救済とかちょっと難しそうですね。
周:行政作用というのはちょっと気取った言い方ですが、要は行政活動のことです。警察が行う交通取締りとか、福祉事務所が行う生活保護の活動などがその例です。行政活動ごとに法律が制定されているのが通例なので、行政法の多くは行政作用法になります。
―――では、行政救済とは何を救済するのですか。
周:行政救済とは、違法な(つまり間違った)行政活動によって被害や不利益を被った国民を救済することなんです。例えば、国家賠償法とか、行政事件訴訟法などがその例です。
―――ひと口に「行政法」と言っても色々な分野があるのですね。きょうは先生のお話を聞いて、行政法の世界は広くて奥が深いことがよく分かりました。でもコツ(基本理論)さえ分かればなんとかなることを知り、少し安心しました。ほんとうにありがとうございました。
周:こちらこそありがとうございました。分からないことがありましたら、いつでも質問に来てください。