逆さメガネの体験
【授業紹介シリーズ】
逆さメガネとは、メガネのレンズ部分に仕掛けがあり、外界から目に入ってくる光を屈折させることで、視界が上下逆さに見えたり、左右逆さに見えたりするメガネです。単にこのメガネをかけて少し歩き回ろうとするだけでも楽しい経験ができますが、心理学的にもとても重要な実験に位置づけられています。
(写真1)
上の写真では自分が左手を前に出し、向かい合った相手も左手を出しています。実際にこのような状況だったとしましょう。ここで、左右を反転させる逆さメガネをかけると以下のように見えます。左手を目の前に出しているにもかかわらずです。
(写真2)
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そのため、メガネをかけ始めたときは、目の前の人と握手をするだけでもとても苦労します。しかし、この逆さメガネはさらに不思議な体験を引き起こします。この逆さメガネをかけながら長い時間生活していると、だんだん慣れてきて普通に生活ができるようになります。人間の適応力はとても高いですね。変化はそれだけではありません。メガネをかけた当初は(写真2)のように見えていましたが、時間経過とともに、メガネをかけているのに(写真1)のように見えてきます。目に入ってくる光は逆さメガネのせいで左右逆転しているのに、あたかもメガネをかけていないかのように見えるわけです。
メガネをかけているのに(写真1)を見て(写真1)のように見えるようになった後、メガネをはずすと今度は、目の前には(写真1)があるはずなのに、(写真2)のように見えてしまいます。逆さメガネをもうかけていないのに、逆さメガネをかけはじめたときと同じ視界が広がります。私たちの目、体、脳はどうなってしまったのでしょうか。
私たちは今いる環境に適応した結果として、そのように見えているわけです。これは、生まれたときから目が見えなかった人が、手術によって目が見えるようになったとき、すぐに私たちと同じような見え方をするようになるのではなく、さまざまな経験によって徐々に見えるようになることとも似ています。視覚と環境への適応はこのように密接にかかわっているのです。
最後に2018年度のゼミで行われた逆さメガネ体験の様子を掲載します。
【逆さメガネで握手】
【逆さメガネでハイタッチ】
社会学科のこれまでの模擬授業動画はこちらです。
【社会学って何の意味があるの?―「生きづらい」社会を「生きやすい」社会に変える―】
【思い込みの心理学】
【マスコミュニケーション論】
【心理学と消費行動】